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「年金代わりになる」は本当か?
35年ローン完済後の手取りを試算した
最終更新:2026-08-02
「ローンを完済すれば、家賃収入がまるごと年金代わりになります」—— 新築ワンルーム投資の営業でよく使われるトークです。ローンが終われば毎月の返済が消えるのは事実で、 その意味では嘘ではありません。
問題は「返済がなくなる=家賃がまるごと手取りになる」わけではない点と、公的年金とはリスクの性質がまったく違う点です。 以下、前提をすべて開示したうえで、完済時点の手取りを2つのシナリオで試算します。
試算の前提条件(物件)
| 物件価格 | 2,800万円(新築ワンルーム) |
|---|---|
| 借入 | 2,800万円(フルローン)・35年・年1.9%元利均等 |
| 月返済額 | 約91,300円 |
| 完済時の想定年齢 | 70歳(35歳で購入した場合) |
| 当初家賃 | 月95,000円 |
| 管理費・修繕積立金 | 月12,000円(築古化に応じて段階的に上昇する前提) |
| 賃貸管理料 | 家賃の約5% |
| 固定資産税・都市計画税 | 年70,000円(経年で評価額は下がるが概算で据え置き) |
① 完済までの35年間、手残りはほぼ薄い
当初家賃95,000円から管理費等12,000円・賃貸管理料5,000円を引いた78,000円のうち、 返済91,300円を差し引くと月13,300円の持ち出しです。 これは完済までの35年間、家賃下落や空室が一切起きない前提でも解消しません。 「年金代わり」というトークは、この完済までの期間について語られないことがほとんどです。
完済前・年間キャッシュフロー(満室想定でも)
(95,000 − 12,000 − 5,000 − 91,300)× 12 = ▲159,600円
② 完済後、実際にいくら残るのか
返済が終われば持ち出しは解消します。ここからが「年金代わり」の本題です。 営業資料が前提にしがちな楽観シナリオと、家賃下落・空室・大規模修繕を織り込んだ現実的なシナリオを並べます。
| シナリオ | 家賃 | 稼働 | 月の手取り |
|---|---|---|---|
| 楽観シナリオ(営業資料が前提にしがちな条件) | 95,000円(新築時から下落なし) | 空室ゼロ・常に満室 | 78,000円 |
| 現実的シナリオ(家賃下落・空室・修繕を織り込む) | 66,500円(35年で新築比▲30%まで下落) | 実質稼働率85%(空室・原状回復期間を控除) | 約28,000円 |
楽観シナリオの月78,000円(年936,000円)と、現実的シナリオの月約28,000円(年約336,000円)では、3倍近い差が出ます。しかも現実的シナリオの数字も、大規模修繕が想定どおりの周期・金額で収まった場合の話です。 1戸の稼働率がゼロになれば、その月の家賃収入はまるごと消えます。
③ 公的年金と決定的に違う3つの点
空室になれば、収入はゼロになる
公的年金は受給資格を満たせば金額が固定されます。一方、家賃収入は入居者がいなければ発生しません。 1戸しか持たない区分マンションは、退去のたびに収入が100%消える「オールオアナッシング」の構造です。 複数戸・複数物件に分散すれば影響は緩和されますが、それはこの試算の前提(1戸保有)を超える追加投資が必要になるという意味でもあります。
完済年齢に近づくほど、支出が増える
35年後の建物は当然、新築時より老朽化しています。外壁・屋上防水・給排水管の更新など、 築30年を超えると大規模修繕の頻度と金額が上がる時期と、完済して収入に頼りたい時期が重なります。 年金と違い、受け取る側の負担(修繕・入退去対応・確定申告)がゼロになるわけではありません。
元本は保証されない
公的年金は保険料を払った実績に応じて受給額が決まる制度です。不動産は資産価格そのものが変動します。 売却して現金化しようとした時点の相場・築年数・立地の需要によって、 そもそも「元本」に相当する金額が当初の想定を下回ることもあります。
結論:「代わり」ではなく「上乗せしうる手段の一つ」
ローン完済後に手取りが生まれること自体は事実です。ただしその金額は前提次第で3倍近く変動し、 公的年金のような受給額の固定性・空室リスクゼロ・元本保証はありません。 「年金の代わり」という言い方は、この変動リスクを覆い隠しています。 より正確には「うまくいけば年金に上乗せしうる収入源の一つ」という位置づけです。
誤解のないように書いておくと、不動産投資そのものを否定しているのではありません。 否定しているのは「年金の代わりになるから安心」という購入動機です。 判断すべきは謳い文句ではなく、完済後も含めた長期の手残りシミュレーションと、 空室・家賃下落・修繕が重なったときにどこまで耐えられるかです。
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本記事は特定の物件・商品の購入や売却を勧誘するものではありません。 将来の家賃・空室率・修繕費・年金制度は変動するため、実際の結果は本記事の試算と異なります。 具体的な投資判断・税務判断は、必ずご自身の状況を踏まえて専門家にご相談ください。
計算の前提
物件の数値は上記「試算の前提条件」に基づく概算です。楽観シナリオは家賃下落・空室・大規模修繕を考慮しない、 営業資料に見られがちな前提です。現実的シナリオの家賃下落率(▲30%/35年)・稼働率(85%)・大規模修繕の按分額は、 一般的な木造・軽量鉄骨ワンルームの目安として置いた概算値であり、個別物件の実際の推移を保証するものではありません。 いずれのシナリオも、完済後の所得税・住民税・確定申告の手間は考慮していません。
出典
公的年金(国民年金・厚生年金)の給付は受給資格期間・保険料納付実績に応じて金額が決まる制度で、 日本年金機構の公表資料に基づく一般的な理解を前提としています。制度は改正される可能性があるため、 最新の情報は日本年金機構・国税庁の公表資料をご確認ください。
筆者について・利益相反の開示
筆者は一棟アパートと戸建を保有する現役の不動産投資家で、区分マンションは過去に保有し売却済みです。 太陽光・区分・一棟と、失敗を含めて自分の資金で経験した範囲について書いています。 また筆者は本サイト(不動産管理ツール AssetOS)の運営者であり、本記事から自社サービスへ誘導しています。 記事の内容は特定の販売会社・仲介会社との提携によるものではありません。